2018年12月1日土曜日

c/k書き分け問題を考察する

悠里・大宇宙界隈 Advent Calendar 2018 一日目の記事です。

1. あぶすとらくと

こんな話がある。
つまり、「悠里は万年メンテ界隈」という話だ。悠里における創作は漸進主義的なもので、進歩していく創作であると。科学的考証やデータの統一化、整理などが常に行われ続け、不明瞭な部分が明らかにされていく――そういう、創作であることは古理字存続論争などで明らかになっているものだろう。というわけで、悠里・大宇宙界隈AdC2018の最初の記事にふさわしいのはそういった原則に沿ったものだろうと思う。

 まあ、クソみたいな御託はおいておくとして、この記事は先日私が以下のような前々からの疑問をツイートしたところから始まっている。
この記事ではこの問題について考えていきたい。

2. /c/と/k/の状況整理

/c/と/k/は碑文体の時代から書き分けが起こっている。これはつまり、碑文体が用いられていた古リパライン語後期には既に/c/と/k/を書き分けていたことになる。逆にロライヘル文字には本来/k/しかなかったため古典リパライン語の最初期に/k/と/c/の書き分けは無かったことになる。

古リパライン語の/c/と/k/は本来[k]で発音されていたが、中期リパライン語までに多くの/c/は[s]に変化していた。古典リパライン語の/c/に由来する古ユナ語の*cに属する27単語中、[s]になった*c2は16個である、[k]になった*c1は7個である(ゼロになる*c3は4個、chになる*c4は1種類)。比較すると、どうやら*c1はo, aなどの紅母音に属する母音が続く場合が多く、*c2は蒼母音に属する母音が続くものが多い。/c/の状況も整理すると以下の通りになる。

《/c/》
古典 /c/ [k] → 中期 /c/ [s]
古典 /c/ → 古ユナ語 /k/(*c1) [k] /___o, a もしくは ___r もしくは ___Vn
古典 /c/ → 古ユナ語 /c/(*c2) [s] /___i, e, u, ə

古典 /c/ → 古ヴェフィス語 /ch/ [ʧ] → 現代ヴェフィス語 /ch/ [ʃ]
古ヴェフィス語 /ch/ [ʧ] → 現代ヴェフィス語 /s/ [s]
古典 /c/ → 古ヴェフィス語 /s/ [s] → 現代ヴェフィス語 /s/ [s]
古ヴェフィス語 /s/ [s] → 現代ヴェフィス語 ゼロ / 語中

《/k/》
古典 /k/ [k] → 中期 /k/ [k]
古典 /k/ [k] → 古ユナ語 /k/ [k]
古典 /k/ [k] → 古ヴェフィス語 /ch/ [ʧ] → 現代ヴェフィス語 /ch/ [ʃ]
古典 /k/ [k] → 古ヴェフィス語 /k/ [k] → 現代ヴェフィス語 /k/ [k]
古典 /k/ → フラッドシャー語 /ch/ [ʧ]

興味深いのは*c1/c2のような変化はヴェフィス語では/k/に対して起きているということである。
恐らくヴェフィス語族で起きている/k/ -> /ch/の変遷は/c/で起きた変化に対する類推で発生したのだろう。
ユナ・リパラオネ語派ではそのまま残ったので語族ではっきり別れているのが良くわかる。

3. 適当に考える

ロライヘル文字で書かれていた古典リパライン語の時期までは/k/と/c/は分類されていなかった。だが、碑文体で書かれる古典リパライン語後期で/c/が生えて、その音声は[kˤ], [kʲ], [c]のようなものであった。発音変化の初期/k/と/c/は混同されることが多かったが、後世になってユナ・リパラオネ語派では口蓋化したために/k/, /c/の書き分けが明確化した。








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